家族の歴史
20年以上にわたり、ロンドンのご家庭で使われ続ける、ヴィツゥのシステム。
文章: Vitsœ
写真: Anton Rodriguez
ヴィツゥのお客さま、GuyとKatherineの住む、北ロンドンの家にお邪魔しました。 ベルを鳴らすと、ボーダーテリアの Bailey が、勢いよく駆けてきました。ドアの向こうに、元気いっぱいの声が響きます。「ここに住みはじめて、もう15年にもなるよ。」玄関へ入ると、外出用のコートや中身がぎっしり詰まった通学用バック、サッカーボールやブーツが並び、Bailey が蹴散らしたであろうリードが、階段下に無造作に落ちていました。慌ただしくも賑やかに過ぎていく、ある家族の日常です。
イギリスの昔ながらのヴィクトリアン様式の家の中は、モダンなライフスタイルに合うよう、全面リフォームが施されていました。正面とその奥の部屋には敢えて仕切りのドアを設けない、開放感のある空間使いが印象的です。「ヴィツゥのシステムは、空間そのもののテイストを損なわず、新たな収納空間を加えることができるんだ。」Guy と Katherine は、ヴィツゥを設置することに、全く迷いは無かったと言います。彼らのヴィツゥのシステムには、本をはじめ、写真、学校のスポーツ大会のメダル、旅先で買ったポストカードなど、家族の思い出がいっぱい詰まっていました。Guy が、はじめてシステムを購入したのは1998年。彼自身のレコードとCDコレクション、ステレオ機材を収納する為でした。 ー 彼のシステムは、棚の追加や組み替えを経て、今では家族の大事な思い出を収納するものになりました。
「1990年代に、Katherine と一緒に住み始めたんだ。僕たちの最初の住まいは、ロンドンのStoke Newington エリアにあるアパート。古い工場を改装した建物で、窓から綺麗な公園が見える部屋だった。部屋の中は、本やCD、レコードの山でぐちゃぐちゃだったよ。」と、Guy は当時を振り返ります。「その当時働いていたオフィスが、ヴィツゥのシステムを使っていたんだ。僕のオフィス以外でも、クリエイティブな空間で、偶然ヴィツゥを目にする機会が多かったんだ。まるで、パズルのように、思い通りに組み合わせることができる。僕自身のクリエイティブな感覚が刺激されるだけでなく、取り外しが簡単だから、一緒に引っ越しもできる棚ってことも、購入の決め手だったよ。」
その後、ふたりの子どもが生まれるまでの間、棚やキャビネット表面に傷がつかないよう、気をつけながら使っていたとのこと。しかし、子育て中は全く気にする余裕もなく、ある日、表面に目立つ傷がたくさんあることに気づいたのだそう。「慌てて、娘の Iris のロッキングチェアをシステムから離し、息子の Hector には、システムの周りではボール遊びをしないように、と伝えたよ。ヴィツゥへ、キャビネットのパネルの交換を問い合わせようと考えた。しかしその時、この傷も家族の思い出なんだ、と気づいたんだ。」システムを見ながらそのように振り返る Katherine は、続けてこのように語りました。「危うく家族の歴史を手放してしまうところだったわ。きっと、完璧なライフスタイルなんて、この世の中にはないんです。ー リアルな日常、これがわたし達の、ありのままの姿なの。」
家具を購入することについて、Katherine が常に感じていることがあるのだそう。「わたし達の家具の買い方が、祖父母に似ている気がして。彼らの時代って、結婚と同時に、身の周りのものを一式買い揃えるでしょ。 そして、ずっと長い間使ってたりして。途中で、最新のものに買い替えることがないの。わたし達も、結婚当初から、同じベッドやソファを使っているわ。ひと昔前のものって、価格は安くはなくても、とにかく長持ちするのよね。ヴィツゥを持っていると、友人に値段のことを聞かれることがよくあるわ。高いんでしょって。でも、わたし達はいつも正直に伝えるの。安いものを使い捨てるより、ずっと経済的なんだって。」
熱狂的なサッカーファンでもある Guy と息子の Hector 。家のテレビで観戦することも多い彼らにとって、テレビの周辺機器の収納は、重視すべきポイントでした。Guy が選んだのは、ヴィツゥのキャビネット。キャビネットの背面を穴あきバックパネルにすることで、配線をスッキリと隠すことができます。「キャビネットの中は、テレビ用のルーターとゲーム機などを収納しているよ。誰だって、テレビ周りをシンプルに、可能な限り綺麗に見せたい。そして、お気に入りの置物とかを飾りたいんだ。当然、使っているうちに、生活感が自然と出てしまうよね。引き出しを開けたら、ペンやクレヨン、自転車用のライトやガラクタまで、ぎっしり詰まっているよ。あまり細かなことまでこだわり過ぎず、使いたいように使っている。収納力が抜群だから、どんどん物を入れても、不思議と収まっていくんだ。」
11歳になる娘の Iris は、幼いながらも一人前に、ディーター・ラムスのデザインについて語るのだとか。「大きくなったらもっとヴィツゥが欲しいって、両親に言ったの。もし使わなくなったら、わたしに全部ちょうだいって。学校の先生や友達にも、こうやって繰り返し使えることは、環境にとても良いことだって伝えてたわ。犬の Bailey にとっては、システムと床の間の隙間が、一番落ち着く場所みたい。」
ヴィツゥのシステムと暮らしはじめて20年。家だけでなく、今では彼らのデザインオフィス Studio Small でも、ヴィツゥのシステムを使っていただいています。「オフィスを設ける時、正直言って、ヴィツゥ以外の選択肢は考えられなかった。本棚には、シンプルなウォールマウント式を。中央にあるコンプレスト式のシステムは、ミーティングスペースとオフィスを仕切るだけでなく、自分たちのポートフォリオをクラインアントに見せるディスプレイとしても活用しているよ。ヴィツゥのプランナーは、システムの使い方まで、細かいアドバイスをしてくれる。マグネットを使ってペーパーワークをディスプレイしているのは、僕らの担当プランナーのアイデアなんだ。」
最後に、ヴィツゥに関して Guy はこのようにコメントしています。「ヴィツゥの シェルビング・システム に、飽きることは決してない。家の中がいくら散らかっていたとしても、何かしら綺麗に収納する解決策があるはず。その一番の解決策が、ヴィツゥと思っている。最初は趣味の一部だったものが、今では僕の家族の歴史、そのものなんだ。」