ライターの隠れ家
考えるための空間。
文章: Vitsœ
写真: Anton Rodriguez
人気雑誌 The Gentlewoman にて、ライター兼編集長を務める Penny Martin のご自宅を訪ねました。
ロンドン市内の南西に位置する静かな住宅街に面する一軒家に、Pennyと、彼女の夫は暮らしています。ロンドンの中心部の慌ただしい編集部から離れ、週の半分ほどを、自身のプロジェクトのために自宅で過ごすという彼女の書斎には、心地よいワークスペースのヒントがたくさんありました。
前の家から引っ越しを決めた時、次の家探しにおいて、Penny は明確なイメージがあったと言います。
「第一に、ハッピーに働ける空間であること。編集の仕事って、時に孤独で、常に締め切りに追われるもの。そんな気持ちを少しでも楽しく、軽減できるような空間にしたかったの。」
執筆用の机は、庭の見える窓の前に置かれている。 「最高のアイデアを形にするために、閉じこもって考え込むことは稀。窓からは近隣の裏庭が見えるので、人々の生活感を感じることができるの。上半身裸でルーフトップでBBQをしている光景もよく見かけるけど、自分の状況を対照的な光景をぼーっと眺めている時って、実は私にとって、とても集中している時間なの。空を見上げて、考えを整理してまた集中力を高めるような感じよ。」
彼女の棚にはレコードのコレクションが。実は、多くのレコードは、若くして亡くなった Penny の弟 Ryan のものだそう。「まだ若かった頃、音楽の趣味が合う Ryan と一緒に、Glasgow のレコード店に頻繁に足を運んでいたわ。」棚に向かいながら、彼女はさらに語りました。
「棚に並んでいるカセットテープは、Ryan が私のために作ってくれたものよ。今はCDに落として、さらに Spotify のプレイリストに登録しているわ。今は何でもデジタル化されちゃって、多くのひとはメールで音楽ファイルをやりとりしてるでしょ。彼が作ってくれたアナログのカセットテープに、デジタルファイルとは比べものにならないくらいの、大きな愛情を感じるの。何にも代え難い、大事なものだわ。」
出版業界でのキャリアについて、自身のことをこのように語りました。 「私は、空間認識が苦手。2Dで何かを作成するのは得意よ。でも、それが3Dになったとたん、完全に混乱してしまう。掃除するのは得意よ。でも片付けは苦手。イギリスのクイズ番組 Krypton Factor みたいに、四角いブロックを四角い穴に入れることが、私にとってすごく難しいお題なの。でも、こんな片付けが苦手な私を、ヴィツゥは助けてくれるの。ヴィツゥは自然と、モノがどこに収まるのがベストか知っているかのよう。ヴィツゥの棚を一緒に暮らしたら、もうヴィツゥの無い生活なんて、想像でいないわ。」
Penny は、どんどんモノが増える書斎に奮闘していました。
「最初のステップとして、まずは棚を片付けないと。人からプレゼントされた本には、全て目を通すようにしているわ。今までは、フィクション小説を読むことは無かったの。雑誌業界で働いている以上、ジャーナリズムを読む必要があると考えていたからね。今の目標は、今まで読む機会が無かったジャンルの本も、全て読んでみてみること。本を片っ端から読み返してみる、まるで、本棚を”編集”しているみたいでしょ。」
「ときどき本棚を見上げて、全ての本を把握しているのかなって考えるの。タイトルもジャンルもばらばら。これは私の夫 Barry のもので、サッカー選手 Karl Marx 本と、中国の毛沢東の本。持ち物は、制限のある空間に、入る分だけ持ちたいと思っていて、この精神がわたしたち夫婦の根底にあるはず。
なのに、ヴィツゥのシェルフの収納力は抜群だから、歯止めが効かなくなりそうよ。必要となれば、棚の追加やレイアウトの変更だって簡単。そして、どんな時でも、エレガントなの。」